軟音記号とアポストロフィ(ь と ’)
2026-10-06
ウクライナ語には、単独では音にならない記号が2つあります。ь(м’яки́й знак、軟音記号)は、直前の子音を軟らげます。’(апо́строф、アポストロフィ)は、子音と母音をつなげずに切り離します。どちらも、読むときは隣の文字を見ます。
軟音記号(ь)とは
ь は33文字の1つですが、音は持ちません。子音字のあとに置くと、その子音が軟子音になります。軟子音は、舌の中ほどを上に盛り上げて出す子音で、日本語の耳には、子音のあとに弱いイが添う響きに聞こえます。
| つづり | 意味 | ь の位置 |
|---|---|---|
| сіль | 塩 | 語末 |
| ті́льки | 〜だけ | 子音の前 |
| оліве́ць | えんぴつ | 語末の ць |
| сього́дні | 今日 | ь のあとの о |
ь は、子音字のあとにだけ付きます。語頭には来ません。сьо や сльо のように、ь のあとに о が続くこともあります。сльоза́(涙)では、с と л の2つの子音が並び、л だけが ь で軟らかくなります。ць の組は、語末でよく見ます。
ь が付けられない子音字もあります。б в ж м п ф ч ш щ のあとには、ь を置きません。つづりの決まりは正書法の記事でまとめます。軟らかい子音と硬い子音の対は、子音字の記事と合わせて見ると、整理しやすくなります。
アポストロフィ(’)とは
’ は、子音字のあとに я ю є ї が来るとき、その間に置きます。я ю є ї は、前の子音を軟らげずに、й の音から始まる母音として読みます。
| 単語 | 意味 | つづりの切れ目 |
|---|---|---|
| п’я́ть | 5 | п|’|я́ |
| ім’я́ | 名前 | м|’|я́ |
| комп’ю́тер | コンピューター | п|’|ю́ |
| м’я́со | 肉 | м|’|я́ |
комп’ю́тер の п’ю は、「ピュ」と1つにまとめて読みません。п のあとで一度区切り、「プ」「ユ」に近く続けます。п’я́ть も同じで、「ピャー」ではなく、「プ」に「ヤー」が続きます。
アポストロフィは、英語のように持ち主や省略を示す印ではありません。区切りの印として、語の中に入ります。
日本語との違い
日本語は、子音と母音を1つのかなで書きます。「きゃ」「ぴゅ」のように、軟らかい子音は、拗音として1音の中に入っています。ウクライナ語は、子音字と母音字を別々に書き、軟らかさは前の子音字に ь を付けるか、あとの母音字で表します。
ь をカタカナで書くと、сіль(塩)は「シーリ」のように、末尾に小さな母音が付きます。ь という字は、かなには存在しません。読み方をかなで覚えたあとも、つづりを見て ь があるかを確かめます。
’ に当たる印は、日本語にありません。п’я́ть は、かなで書くと「プヤーチ」のように、子音と母音を別の拍に分けて表します。
練習問題
正しいものを選んでください。
- сіль の ь は( 子音のように読む / 前の л を軟らかくする / 母音のように読む )ためのものです。
- ім’я́ の ’ は( м と я を区切る / 意味を変える / 軟音記号の代わり )印です。
- ь を続けて書けないのは( л / н / п )のあとです。
答え
- 前の л を軟らかくする
- м と я を区切る
- п(б в ж м п ф ч ш щ のあとには ь を置かない)
参考にした資料
- 黒田龍之助『初級ウクライナ語文法』三修社、2017年、p.11「’」、p.15「ь の使い方」
- オクサーナ・ピスクノーヴァ『ゼロからスタート ウクライナ語 文法編』Jリサーチ出版、2023年、文字と発音編 Урок 3「ь」、Урок 4「アポストロフィ」