形容詞の格変化と短語尾形(відмі́нювання)
2026-10-08
- 文法
- 初級
名詞が主格以外の格になると、そこにかかる形容詞も同じ格・性・数の語尾に変わります。語尾の一覧は、硬音型の га́рний と軟音型の си́ній を覚えれば、ほかの形容詞にも当てはまります。形容詞には、男性の主格が -ий で終わらず、述語にしか使わない短語尾形を持つものも少しあります。初級の範囲では、硬音型と軟音型の語尾表と、対格の人・物の使い分け、短語尾形の作り方を押さえれば足ります。
使う場面
「すてきな町に住んでいる」の「すてきな町に」のように、名詞が所格・属格・与格・具格・対格のどれかになるとき、形容詞も同じ格にします。形容詞の記事で見た4つの形(男性・女性・中性・複数)は、主格だけの話でした。ほかの格でも、名詞の性と数に合わせる点は変わりません。
- Ми живемо́ в га́рному мі́сті.(私たちはすてきな町に住んでいます)
- Це телефо́н до́брого дру́га.(これはよい友達の電話です)
作り方
形容詞の格変化は、男性と中性が主格以外で同じ形になります。格を表す語尾を、色を付けて示します。まず硬音型の га́рний(美しい)を、格ごとに並べます。
| 格 | 男性・中性 | 女性 | 複数 |
|---|---|---|---|
| 主格 | га́рний / га́рне | га́рна | га́рні |
| 対格 | 下の説明 | га́рну | 下の説明 |
| 属格 | га́рного | га́рної | га́рних |
| 所格 | га́рному | га́рній | га́рних |
| 与格 | га́рному | га́рній | га́рним |
| 具格 | га́рним | га́рною | га́рними |
軟音型の си́ній(青い)は、硬音型の語尾に対応する形です。-ого は -ього、-ої は -ьої、-ому は -ьому、-ою は -ьою、-у は -ю になり、複数は -их が -іх、-им が -ім、-ими が -іми になります。
| 格 | 男性・中性 | 女性 | 複数 |
|---|---|---|---|
| 主格 | си́ній / си́нє | си́ня | си́ні |
| 対格 | 下の説明 | си́ню | 下の説明 |
| 属格 | си́нього | си́ньої | си́ніх |
| 所格 | си́ньому | си́ній | си́ніх |
| 与格 | си́ньому | си́ній | си́нім |
| 具格 | си́нім | си́ньою | си́німи |
所格には、男性・中性に -ому(軟音型は -ьому)のほかに -ім という語尾もありますが、-ому のほうが一般的です。黒田龍之助の文法書は、所格を前置格ともいいます。
対格は、女性だけが専用の語尾(-у、軟音型は -ю)を持ちます。男性と複数は、名詞が人・動物なら属格と同じ形、物・ことなら主格と同じ形になります。中性は、主格と同じ形です。
- 対格
- 硬音型
- 男性(物・こと)
- га́рний
- 男性(人・動物)
- га́рного
- 中性
- га́рне
- 複数(物・こと)
- га́рні
- 複数(人・動物)
- га́рних
- 対格
- 軟音型
- 男性(物・こと)
- си́ній
- 男性(人・動物)
- си́нього
- 中性
- си́нє
- 複数(物・こと)
- си́ні
- 複数(人・動物)
- си́ніх
属格の語尾は、アクセントが語尾にある形容詞でも同じです(старо́го、属格の記事で説明しています)。アクセントの位置は、га́рний も си́ній も語幹の第1音節のまま、どの格でも動きません。
3人称の人称代名詞の語尾と見比べると、与格の йому́(га́рному)、їй(га́рній)、їм(га́рним)、具格の ним(га́рним)、не́ю(га́рною)のように、語尾がよく似ています。人称代名詞の変化は、人称代名詞の格変化の記事で説明しています。
短語尾形
形容詞には、いつもの長語尾形のほかに、男性の形で -ий を落とす短語尾形を持つものが少しあります。短語尾形は述語としてだけ使います。-ий を落とした結果、語末に子音が2つ続くときは、е が間に入ります(згі́дний → згі́ден)。
- 形
- 長語尾形(賛成である)
- 男性
- згі́дний
- 女性
- згі́дна
- 中性
- згі́дне
- 複数
- згі́дні
- 形
- 短語尾形(賛成である)
- 男性
- згі́ден
- 女性
- згі́дна
- 中性
- згі́дне
- 複数
- згі́дні
違うのは男性形だけで、女性・中性・複数の形は長語尾形と同じです。短語尾形を持つ形容詞のうち、ここで確認できたのは згі́ден の1つです。ほかにどの形容詞が短語尾形を持つかは、見出しごとに辞書で調べます。
形容詞を名詞として使う
形容詞は、名詞を添えずにそれだけで名詞として使うことがあります。名詞としての性を持ちますが、格による語尾は形容詞と同じです。знайо́мий(知人・男性)、знайо́ма(知人・女性)、знайо́мі(知人・複数)が例です。
- Це мій знайо́мий.(これは私の男性の知人です)
- Ми телефону́ємо знайо́мій.(私たちは女性の知人に電話します)
2つめの знайо́мій は、女性の与格の語尾 -ій です。телефонува́ти の相手は与格で表すので、знайо́ма が знайо́мій に変わります。
日本語・英語と比べると
日本語の形容詞は、「すてきな町」「すてきな町に」のように、格を表す「に」や「の」が名詞のほうに付き、形容詞の形は変わりません。英語の形容詞も、名詞の格では変わりません。ウクライナ語では、形容詞が名詞と同じ格・性・数に合わせて語尾を変えるので、名詞を見ると形容詞の語尾が決まります。日本語の「知人」や英語の acquaintance のように、形容詞が1語で名詞になる点は、знайо́мий に似ています。ただし、ウクライナ語ではその単語が形容詞の変化を続けます。
例文
- Ми живемо́ в га́рному мі́сті.(私たちはすてきな町に住んでいます)
- живемо́ → 現在形。жи́ти(住む)の1人称複数の変化。
- в → 場所を表す前置詞。あとに所格が続く。
- га́рному → 所格・中性。мі́сто が中性なので、-ому を付ける。
- мі́сті → 所格。мі́сто の о を取って -і を付ける。
- Це телефо́н до́брого дру́га.(これはよい友達の電話です)
- це → 「これは」。
- телефо́н → 主格の名詞(男性・単数)。述語になる単語。
- до́брого → 属格・男性。дру́га が男性なので、-ого を付ける。
- дру́га → 属格。телефо́н の持ち主。人を表す男性名詞なので、-а を付ける。
- Ми телефону́ємо до́брій ма́мі.(私たちはやさしいお母さんに電話します)
- телефону́ємо → 現在形。телефонува́ти(電話する)の1人称複数の変化。
- до́брій → 与格・女性。ма́ма が女性なので、-ій を付ける。
- ма́мі → 与格。電話をかける相手。-а を -і に変える。
- Ми їмо́ суп си́ньою ло́жкою.(私たちは青いスプーンでスープを食べます)
- їмо́ → 現在形。ї́сти(食べる)の1人称複数の変化。
- суп → 対格の名詞。物を表す男性名詞なので、主格と同じ形。
- си́ньою → 具格・女性。軟音型なので、語尾は -ьою。
- ло́жкою → 具格。食べる道具。-а を -ою に変える。
- Ми ба́чимо до́брого дру́га і га́рну дівчи́ну.(私たちは、よい友達ときれいな女の子を見ます)
- ба́чимо → 現在形。ба́чити(見る)の1人称複数の変化。
- до́брого → 対格・男性。дру́га が人を表す男性名詞なので、属格と同じ形。
- дру́га → 対格。人を表す男性名詞なので、属格と同じ形。
- га́рну → 対格・女性。дівчи́на が女性なので、-у を付ける。
- дівчи́ну → 対格。-а を -у に変える。
- Ти чита́єш га́рний підру́чник.(あなたはよい教科書を読みます)
- чита́єш → 現在形。чита́ти(読む)の2人称単数の変化。
- га́рний → 対格・男性。підру́чник が物なので、主格と同じ形。
- підру́чник → 対格。物を表す男性名詞なので、主格と同じ形。
- Мій брат згі́ден.(私の兄は賛成です)
- мій → 所有形容詞の男性・主格。
- брат → 主格の名詞(男性・単数)。主語。
- згі́ден → 短語尾形・男性。述語として使う。згі́дний の -ий を落とし、子音が続くので е が入る。
練習問題
正しいものを選んでください。
- Ми живемо́ в( га́рне / га́рному / га́рного )мі́сті.
- Ми телефону́ємо( до́бра / до́брій / до́брої )ма́мі.
- Це телефо́н( до́бру / до́брій / до́брого )дру́га.
答え
- га́рному(中性の所格は -ому)
- до́брій(女性の与格は -ій)
- до́брого(男性の属格は -ого)
参考にした資料
- 中澤英彦『ニューエクスプレス ウクライナ語』白水社、2009年、p.91「3. 形容詞の格変化」(硬変化型 га́рний と軟変化型 си́ній の語尾表、男性・中性は主格以外同形、対格の人・物の使い分け、所格語尾 -ому/-ім)
- 同、p.87「3. 形容詞の短語尾形」(згі́дний と згі́ден の表、述語としてのみ用いる、子音が続くと -е が入る)
- 同、p.99「3. 形容詞の名詞的用法」(знайо́мий・знайо́ма・знайо́мі、変化は形容詞のまま)
- 黒田龍之助『初級ウクライナ語文法』三修社、2017年、p.234「形容詞の変化表」(-ий と -ій で終わる形容詞の、すべての格の語尾)
- goroh.pp.ua 「згі́дний」の словозмі́на「згі́дний、згі́дна、згі́дне」(2026-10-08閲覧)、語形とアクセントを確認。短語尾形 згі́ден は載っておらず、中澤 p.87 による