名詞の複数形の格変化(множина́)
2026-10-08
- 文法
- 初級
複数形の名詞も、単数と同じように、格によって語尾が変わります。所格・与格・具格の語尾は、名詞の性に関係なく、最後の音が硬音か軟音かで2つの種類に分かれるだけで、作り方は単数よりずっと単純です。難しいのは属格で、語尾が -ів になる語、語尾がなくなる語、母音が入る語があります。初級の範囲では、6つの格の語尾と、属格の3つの作り方を押さえれば足ります。
使う場面
複数の人や物を、主語以外の働きで言うときに使います。
- 「〜を」は対格、「〜に」は与格、「〜と」は具格です。
- 「〜の」や「〜がない」は属格、場所を表す前置詞のあとは所格です。
人・動物を表す名詞は、対格が属格と同じ形になります。物・ことを表す名詞は、対格が主格と同じ形です。
- Окса́на зна́є гі́дів.(オクサーナはガイドたちを知っています)
- Лікарі́ живу́ть у міста́х.(医師たちは都市に住んでいます)
主格の複数形の作り方は、名詞の複数形の記事で説明しています。
作り方
複数形の6つの格を、硬音型と軟音型に分けて示します。色の付いた語尾のほかに、属格には語尾のない形もあります。
硬音型の複数形は、次のとおりです。
| 格 | гід(ガイド・男性) | мі́сто(都市・中性) | мо́ва(言葉・女性) |
|---|---|---|---|
| 主格 | гі́ди | міста́ | мо́ви |
| 対格 | гі́дів | міста́ | мо́ви |
| 属格 | гі́дів | міст | мов |
| 所格 | гі́дах | міста́х | мо́вах |
| 与格 | гі́дам | міста́м | мо́вам |
| 具格 | гі́дами | міста́ми | мо́вами |
軟音型の複数形は、次のとおりです。
| 格 | лі́кар(医師・男性) | по́ле(野原・中性) | пі́сня(歌・女性) |
|---|---|---|---|
| 主格 | лікарі́ | поля́ | пісні́ |
| 対格 | лікарі́в | поля́ | пісні́ |
| 属格 | лікарі́в | полі́в | пісе́нь |
| 所格 | лікаря́х | поля́х | пісня́х |
| 与格 | лікаря́м | поля́м | пісня́м |
| 具格 | лікаря́ми | поля́ми | пісня́ми |
男性の гід と лі́кар は人を表すので、対格が属格と同じ形です。物を表す мі́сто、мо́ва、по́ле、пі́сня は、対格が主格と同じ形です。
所格・与格・具格は、性に関係なく、硬音型は -ах・-ам・-ами、軟音型は -ях・-ям・-ями です。лі́кар のように、最後が -р でも軟音型の語尾を取る語があります。どちらか分からないときは、辞書で複数形を確かめてください。アクセントの位置も、単数と複数で変わる語があります(мі́сто → міста́)。
属格の作り方
属格の複数形は、主格の単数の終わり方で決まります。大半は -ів ですが、-ів 以外のときは、終わりを落とすのが原則です。
| 主格の終わり | 属格の複数形 | 例 |
|---|---|---|
| 男性・硬音(-й 以外) | -ів を足す | гід → гі́дів |
| 男性・軟音 -й | -й を取って -їв | край(地方)→ краї́в |
| 男性・軟音 -ь | -ь を取って -ів | день(日)→ днів(е も落ちる) |
| 中性・軟音 -е | -е を取って -ів | мо́ре(海)→ морі́в |
| 中性・硬音 -о | -о を取って語尾なし | сло́во(単語)→ слів |
| 女性・硬音 -а | -а を取って語尾なし | ма́ма(お母さん)→ мам |
| 女性・軟音 -я | -я を ь に変える | пі́сня → пісе́нь |
| 女性・軟音 -ія | -ія を ій に変える | наді́я(望み)→ наді́й |
中性名詞の -о と女性名詞の -а を落とすと、最後に子音が並ぶことがあります。このときは、ふつう о か е を間に入れます(дівча́тко「少女」→ дівча́тка → дівча́ток)。語尾が落ちて最後の音節が子音で閉じると、語幹の中の о が і に変わることもあります(сло́во → слів。変わるのは語尾の -о ではなく、сл-о-в の о)。пі́сня → пісе́нь の е は、дівча́ток の о と同じく、子音が並ぶのを避けて入れた母音です。
黒田龍之助の文法書は、属格を生格ともいいます。その変化表も、-ь で終わる女性名詞の複数属格は -ей、-я で終わる中性名詞は語尾が ь になると示しています(тінь → ті́ней、знання́ → знань)。この記事の表の形と矛盾はありません。
日本語・英語と比べると
日本語は、「ガイドたちを」「ガイドたちに」のように、複数を表す「たち」のあとに助詞を付けます。助詞を変えるだけで、名詞の形は変わりません。英語は、guides のように名詞を複数にしたあと、格による変化はほとんどありません。ウクライナ語は、複数にしたうえで、さらに6つの格で語尾が変わります。ただし、所格・与格・具格は性に関係なく2種類だけなので、覚える形は少なくて済みます。
例文
各文の下の説明は、名詞の格と、その語尾になった理由です。
- Окса́на зна́є гі́дів.(オクサーナはガイドたちを知っています)
- зна́є → зна́ти の3人称単数。
- гі́дів → 複数の対格。人を表す男性名詞なので、属格と同じ形。硬音型の -ів。
- Ми зна́ємо пісні́.(私たちは歌をいくつか知っています)
- зна́ємо → зна́ти の1人称複数。
- пісні́ → 複数の対格。物を表す名詞なので、主格と同じ形。
- У мі́сті нема́є теа́трів.(町には劇場がありません)
- у мі́сті → 所格。場所を表す у のあと。
- нема́є → 「ない」を表す語。あとに属格が続く。
- теа́трів → 複数の属格。硬音型の男性名詞なので、-ів を足す。
- У кни́зі нема́є слів.(本には言葉がありません)
- у кни́зі → 所格。単数のまま。
- слів → 複数の属格。сло́во の -о を落とし、о が і に変わる。
- Окса́на чита́є лікаря́м кни́гу.(オクサーナは医師たちに本を読んで聞かせます)
- лікаря́м → 複数の与格。軟音型なので -ям。
- кни́гу → 対格。読むもの。
- Вона́ гово́рить з гі́дами.(彼女はガイドたちと話します)
- з → 「〜と一緒に」を表す前置詞。あとに具格が続く。
- гі́дами → 複数の具格。硬音型なので -ами。
- Лікарі́ живу́ть у міста́х.(医師たちは都市に住んでいます)
- лікарі́ → 複数の主格。主語。
- живу́ть → жи́ти の3人称複数。
- у міста́х → 複数の所格。硬音型なので -ах。
練習問題
正しいものを選んでください。
- Вона́ гово́рить з( гі́ди / гі́дів / гі́дами ).
- У мі́сті нема́є( теа́три / теа́трів / теа́трам ).
- Лікарі́ живу́ть у( міста́ / міст / міста́х ).
答え
- гі́дами(з のあとは具格で、硬音型は -ами)
- теа́трів(нема́є のあとは属格で、硬音型の男性名詞は -ів)
- міста́х(у のあとは所格で、硬音型は -ах)
参考にした資料
- 中澤英彦『ニューエクスプレス ウクライナ語』白水社、2009年、p.86「名詞の複数形格変化」(硬音型・軟音型の6つの格の表、人・動物と物の対格)
- 同、p.86「名詞複数の属格形」(属格の語尾の表)と p.87(母音の挿入、сло́во → слів、дівча́тко → дівча́ток)
- 黒田龍之助『初級ウクライナ語文法』三修社、2017年、pp.229–230「ウクライナ語の変化表 名詞」(複数の語尾、-ь で終わる女性名詞の属格 -ей、活動体の対格の注)